「東京23区の不動産なら手堅い」——そう聞いても、いざ自分のお金を投じるとなると確信が持てない。そんな方は多いのではないでしょうか。
不動産投資における最大のリスクは、値下がりよりもまず「空室」です。ローンの返済も管理費も、入居者がいてもいなくても発生します。そして、その空室リスクをいちばん左右するのが、そのエリアに「これからも人が住み続けるのか(賃貸需要が減らないのか)」という一点なのです。
結論から申し上げると、日本全体の人口が減っていく2026年現在も、東京23区には人が流入し続けています。しかも今、23区の新築マンションの平均価格が1億円を大きく超え、本来なら「買えるはずの人」までもが「あえて借りる」側に回り始めています。これは、賃貸物件を持つ投資家にとって、見逃せない追い風です。
ただし、ここには一般にはあまり語られない「落とし穴」もあります。「23区ならどこでも安泰」ではないという事実、そして「単身が増えるからワンルーム一択」でもないという事実です。
この記事では、東京都・総務省・国土交通省などの客観的なデータだけを根拠に、「なぜ23区は増え続けるのか」「増えているのは誰で、“借りる”のは誰なのか」「どの区の・どんな物件が落ちにくいのか」を順に解き明かします。営業トークではなく、あなた自身がデータで判断できるようになることを目指しました。ぜひ最後までご覧ください。
1. 【マクロ】日本全体が減る中、なぜ東京23区の人口は増え続けるのか
結論から申し上げると、日本の総人口が減少局面に入った今も、東京23区の人口は増え続けています。他の地域から人が移り住んでくる「社会増(転入超過)」が非常に大きいからです。
まず日本全体を確認しましょう。総務省統計局の人口推計によると、2026年(令和8年)6月1日現在の日本の総人口は約1億2,285万人で、前年同月から約53万人の減少(▲0.43%)。日本人だけでは1年で約90万人が減っています。「人口減少社会」はもはや前提であり、これからの不動産投資は「人が減らない場所をどう選ぶか」という発想が欠かせません。
では東京はどうか。東京都の推計人口は2026年(令和8年)5月1日時点で約1,433万人。うち23区(区部)は約999万人と、ほぼ1,000万人の規模を保っています。
この流れを最もはっきり示すのが、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」です。2025年(令和7年)の1年間で、東京都は6万5,219人の転入超過(転入が転出を上回った数)となり、これは全国最多でした。23区(特別区部)だけでも約5万3,899人の転入超過です。埼玉・千葉・神奈川を加えた東京圏では、日本人の移動でみて30年連続の転入超過が続いています。

つまり、「日本の人口は減っている」ことと「東京23区に人が集まり続けている」ことは、同時に起きている事実です。
表1:日本全体と東京の人口動態(2025〜2026年)
| 指標 | 数値 | 出典(時点) |
|---|---|---|
| 日本の総人口 | 約1億2,285万人 | 総務省 人口推計(2026年6月) |
| 東京都の人口 | 約1,433万人 | 東京都の人口(推計)(2026年5月) |
| うち東京23区(区部) | 約999万人 | 同上 |
| 東京都の転入超過数 | 6万5,219人(全国最多) | 総務省 人口移動報告(2025年) |
| うち23区(特別区部) | 約5万3,899人 | 東京都 人口移動報告(2025年) |
※出典元:総務省統計局「人口推計」「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」、東京都「東京都の人口(推計)」
ただし、冷静に押さえたい点も一つ。東京都の転入超過は2025年に4年ぶりに縮小し、外国人はわずかに転出超過へ転じました。また後述の通り、東京都でも2030年ごろに人口はピークを迎える予測です。「東京だから未来永劫、人口が増え続ける」わけではない。だからこそ、「どこの・どんな需要が伸びるのか」という見極めが、長期安定のカギになります。
2. 【誰が増えているか】「人口増=安泰」の落とし穴|若年単身者の流入とファミリーの郊外流出
先に結論をお伝えします。東京23区で増えているのは主に「若い単身者」で、ファミリー層(35歳以上)はむしろ都外へ出ていっています。「人口が増えている=どんな物件でも安泰」ではありません。増えている「中身」を見ることが、物件選びの分かれ道です。
総務省の人口移動報告(2025年)を東京都の年齢別にみると、15〜19歳で+1万2,944人、20〜24歳で+5万7,263人、25〜29歳で+2万642人と、若年層の転入超過が突出しています。進学・就職を機に地方から出てくる若者たちです。一方で、55〜69歳はいずれも転出超過(60〜64歳は▲4,222人)で、子育て世代のファミリー層も郊外へ移る傾向があります。
つまり、東京23区に数年住んで家庭を持った層は、より広く安価な住環境を求めて周辺県や郊外へという流れがある。テレワークの定着もこれを後押しします。結果として、都心部で構造的に強いのは単身者・少人数世帯向けの賃貸需要なのです。

この傾向は、世帯構造の長期予測とも一致します。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、東京都の単身世帯(単独世帯)割合はすでに約50.2%(2020年)に達し、2030年に約52.4%、2050年には約54.1%へと上昇していく見通しです。全国が2050年に4割超という水準ですから、東京はすでに「2世帯に1世帯が単身」という、単身需要が突出して厚い市場だとわかります。東京都の1世帯あたり平均人員も、2020年の約1.92人から将来は約1.8人へと下がる予測です。
このデータから読み取れる示唆
- 東京23区の賃貸需要は、単身者・少人数世帯に構造的な厚みがある(東京はすでに約5割が単身世帯)。
- 「人口が増えている」だけを頼りにせず、“誰の需要が伸びるのか”で物件を選ぶ。
- 次章で見るように、この「単身・少人数」の中身は、若者だけではありません。購買力の高い層まで賃貸に回っているのが今の東京です。
※マクロな傾向です。実際の妥当性は立地・築年・管理・価格で変わります。個別判断は後述の無料相談でご確認ください。
3. 【誰が”借りる”のか】1億円時代がつくる「高所得借家層」という強い需要
ここは、多くの記事が語らないこの記事の核心です。結論から申し上げると、東京23区のマンション価格が1億円を大きく超えたことで、本来は「買えるはずの人」までもが「あえて借りる」側に回っています。つまり、都心の賃貸市場には、家賃を無理なく払い続けられる「高所得の借り手」が厚く存在する。これは、空室リスクの”質”を根本から変える事実です。
不動産経済研究所によると、2025年の東京23区の新築分譲マンション平均価格は約1億3,613万円(前年比+21.8%、3年連続の1億円超)。都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)に至っては約1億9,503万円と2億円が目前です。資材・人件費の高騰と用地不足で、価格の高止まりが続いています。
この水準になると、年収1,000万円前後の会社員や公務員(本記事では公務員の方も含めて「サラリーマン」と表記します)——つまり「本来は住宅を買える層」——でも、無理なローンを避けて利便性の高い都心に賃貸で住み続けるという選択が合理的になります。実際、賃料は下がるどころか上がり続けています。マンション賃料インデックス(三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム共同)によれば、2025年第4四半期の東京23区の賃料は前年同期比+5.3%で、13四半期連続の過去最高を更新。とりわけファミリータイプは+12.4%と、広めの住戸の伸びが目立ちます。

「高所得借家層」が投資家にとって意味すること
- 都心の賃貸には、家賃を払い続けられる強い借り手がいる。単なる「人口が多い」以上に、空室リスクを下げる質的な要因になる。
- あなた自身がこの層に近いなら、“借り手の気持ち”が分かる投資家でもあります。自分が住みたいと思える物件は、同じ層に選ばれやすい。
- 賃料が上がっている今は、新規募集や入替のタイミングで家賃を適正化しやすい局面でもあります。
※価格・賃料は市況で変動します。数値は調査時点の概算であり、将来を保証するものではありません。中古市場では実需層の購買力が追いつかず、成約価格の伸びが鈍る動きも出ています(=価格がどこまでも上がる前提ではない点は後述)。
4. 【正しいものさし】賃貸需要は「人口」ではなく「世帯数」、空室率は「稼働ベース」で読む
ここで、ものさしを2つ持ちましょう。賃貸需要を測るのは「人口」ではなく「世帯数」、空室の怖さを測るのは「稼働ベースの空室率」です。この2つを持つだけで、「人口が減り始めたら賃貸も終わり」「空室率が2割もあって危ない」といった誤解から自由になれます。
ものさし①:人口ではなく「世帯数」
賃貸を1戸借りるのは「1人」ではなく「1世帯」です。人口が減っても、単身化で世帯が細分化すれば、必要な住戸数(世帯数)はむしろ増えます。東京都「東京都世帯数の予測」によれば、
- 東京都の総人口は2030年ごろに約1,426.5万人でピークを迎え、以後は緩やかに減少。
- しかし一般世帯数は2035年ごろの約768.3万世帯まで増加が続く。
- 23区に限れば、世帯数のピークは2040年ごろの約563.6万世帯で、2020年比で約42.6万世帯(+8.2%)の増加が見込まれます。
表2:東京都の「人口ピーク」と「世帯数ピーク」のズレ
| 指標 | ピークの時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 東京都の総人口 | 2030年ごろ | 約1,426.5万人で頭打ち |
| 東京都の一般世帯数 | 2035年ごろ | 約768.3万世帯まで増加 |
| 東京23区の世帯数 | 2040年ごろ | 約563.6万世帯(2020年比+8.2%) |
※出典元:東京都「東京都世帯数の予測」(2024年3月公表)
つまり「2030年に人口が減り始めたら東京の賃貸は終わり」は正確ではありません。少なくとも23区では、需要単位である世帯数が2040年ごろまで増える構造にあります。35年の長期保有を前提とする不動産投資にとって、心強い前提です(ただしこれは一定の前提に基づく予測であり、断定はできません)。
ものさし②:空室率は「稼働ベース」で見る
「東京でも空室率は15〜17%もある」という話を聞いて不安になる方がいます。ですが、この数字には別荘・売却用・建て替え待ちなど、そもそも募集していない住戸が含まれます。投資家が本当に見るべきは、実際に募集されている物件のうち埋まっていない割合=稼働ベースの空室率です。
統計上の「空き家率」(総住宅数に占める空き家の割合)と、投資判断に使う「稼働ベースの空室率」(実際に募集している住戸のうち埋まっていない割合)は定義が違います。前者は別荘・売却用・建て替え待ちなども含むため実態より高めに出やすく、後者の方が賃貸経営の実感に近い数字です。この違いを知っているだけで、過度に煽られずに判断できます。
※空室率の数値は調査主体・時点・定義で異なります。ここでの数値は民間指標に基づく概算であり、個別物件の空室リスクを保証するものではありません。
5. 【エリア選定】人口推移から見る「家賃が落ちにくい区」の3条件と、“三極化”の賢い狙い方
「家賃が落ちにくい区」には、3つの共通条件があります。
- ① 世帯数(とくに単身世帯)が今後も増える
- ② 地価が需要に支えられている
- ③ 再開発・交通インフラで将来需要が見込める
ここで大切なのは、この3条件は「都心5区の専売特許」ではないということです。都心の中心部は資産性こそ高いものの、価格・家賃も高く、賃貸利回りは低くなりがちです。実際、2025年の23区の新築マンション平均は1億3,613万円、都心6区は約1億9,503万円に達し、居住用としての実需の手を離れつつあります。
一方で、再開発と交通の追い風を受ける準都心・周辺区の中には、この3条件を満たしながら、都心より取得しやすく利回りも取りやすい区があります。資産性と利回りのどこでバランスを取るか——これが、サラリーマンのエリア選びの核心です。同時に、区によっては世帯数が減る予測もあるという二極化も、正直に直視します。
条件①:世帯数(とくに単身世帯)が今後も増える区か
東京都の予測(2020年→2040年の一般世帯数増減率)では、都心部の伸びが際立ちます。中央区+37%、千代田区+29%、港区+15%、品川区+14%。これに対し、周辺・下町区の一般世帯数は大田区+5%、中野区+3%、葛飾区+3%と、伸びは穏やかですがしっかりプラスを保ちます(23区平均は+8%、豊島区は▲1%の微減予測)。
見落とせないのが単身世帯の伸びです。賃貸の主役である単独世帯で見ると、大田区+11.34%、中野区+4.29%と、周辺・下町区でもしっかり増える予測です(葛飾区は確認作業中)。中野区は1世帯あたり人員が約1.66人(2020年)と23区でも指折りに小さく、単身賃貸の地盤が厚いエリアです。
条件②:地価が需要に支えられている区か(“高い=良い”ではない)
2026年の公示地価(住宅地)は、23区平均+9.0%。都心部は個別に見ても上昇率が高く、港区+16.6%(区部最高)、品川区+13.9%と、全体平均を大きく上回ります。数字だけ見れば都心が圧倒的ですが、投資家の視点では、高い上昇率は「高い取得コスト」の裏返しでもあります。
たとえば葛飾区の住宅地は+5.6%と、23区の住宅地で最も穏やかな上昇にとどまりました。これは裏を返せば、実需がスライドしやすい取得価格帯に踏みとどまっているということです。ここに、23区全域の単身向けマンションの建築規制(一定の広さの土地がないと新規開発できない)と資材高騰が重なり、新築の発売戸数は10年で半分以下に減りました。人口は増え続ける一方、供給は絞られる——この需給の歪みが、既存・築浅の単身向け物件の価値と稼働を下支えします。
表3:区別「需要の落ちにくさ」早見表(“三極化”で見る)
| ティア | 区 | 世帯数 (一般/単独, 2020→2040) |
2026 住宅地地価 | シングル賃料 (坪単価, 2025) |
再開発・交通の材料 |
|---|---|---|---|---|---|
| ベスト (都心5区) |
港区 | +15%/― | +16.6%(最高) | 18,252円 | 麻布台・品川高輪GW |
| ベスト (都心5区) |
中央区 | +37%/― | 上昇 | 16,957円 | 湾岸・日本橋 |
| セカンドベスト (準都心) |
品川区 | +14%/― | +13.9% | 16,053円 | 品川駅周辺・大井町 |
| セカンドベスト (周辺・下町) |
中野区 | +3%/+4.29% | ― (商業地+17.5%) |
14,128円 | 中野駅11事業・中央線 |
| セカンドベスト (周辺・下町) |
大田区 | +5%/+11.34% | ― | 13,652円 | 新空港線(蒲蒲線)・羽田 |
| セカンドベスト (周辺・下町) |
葛飾区 | +3%/― | +5.6% | 12,812円 | 立石駅前3地区・京成高架化 |
| 見極め必須 | 豊島区 | ▲1% | 上昇 | ― | 池袋再開発は材料 |
※数値は概算・傾向であり、区内でも立地で大きく異なります。特定の区・物件の値上がりや利回りを保証するものではありません。「―」はデータなし。 ※出典元:東京都「東京都世帯数の予測」、国土交通省/東京都財務局「地価公示(2026年)」、賃料坪単価=野村不動産ソリューションズ「マンション賃料相場分析 東京23区」(2025年)、各区・事業者の再開発公表資料。

表の読み方——都心5区(港・中央)は資産性が高い一方、シングル賃料は坪18,000円前後と高くなります。対して中野区は賃料坪単価が14,128円、大田・葛飾も13,000〜12,000円台と手が届きやすく、取得のしやすさが際立ちます。「高く上がった区」ではなく、「需要はあるのに、まだ取得しやすい区」を選ぶ——これがサラリーマンの現実的な戦略です。
条件③:再開発・交通インフラで将来需要が見込める区か(都心だけでなく、準都心・下町にも波及)
再開発と新路線は、「まだ地価に織り込まれていない将来需要」の先行指標です。都心の代表例が品川・高輪ゲートウェイで、2026年3月28日に「TAKANAWA GATEWAY CITY」がグランドオープン。リニア品川始発、南北線の品川延伸(2030年代半ば予定)、羽田空港アクセス線(2031年度一部先行予定)などが重なります。
そして重要なのは、この波は都心だけの話ではないことです。準都心・下町の駅前でも、需要を底上げする再開発が進んでいます。
- 葛飾区・京成立石:駅前3地区でタワーマンションと区役所(新庁舎)が整備され、京成押上線の高架化(2030年度末に工事完了予定)で踏切が解消。“下町の駅前”が拠点へ生まれ変わります。金町など下町各駅では単身向け賃料が近年大きく上昇しています。
- 大田区・蒲田:新空港線(蒲蒲線)が2025年10月に整備許可を取得。開業は令和20年代前半の見込みで、実現すれば渋谷・新宿方面や羽田空港へのアクセスが向上。品川・大森・蒲田から品川駅へ6〜9分という城南の職住近接需要を受けます。
- 中野区・中野駅周辺:「100年に一度」と呼ばれる11事業が同時進行。大規模レジデンス(807戸)の竣工に続き、新駅ビル・南北通路の開業が2026〜2027年に相次ぎ、中央線一本で新宿まで数分という利便に駅前刷新が重なります。
三極化の”賢い狙い方”——サラリーマンの主戦場はセカンドベスト
都心の高価格エリアは資産性が高い反面、賃貸利回りは低くなりがちです。そこで市場では、都心5区を「ベスト」とし、その周辺で再開発・交通の追い風がある準都心・周辺区を「セカンドベスト」として狙う動きが強まっています(市場の「三極化」)。
サラリーマンが資産性と利回りのバランスを取るうえで、現実的な主戦場になりやすいのが、このセカンドベストです。中野・大田・葛飾のように、駅前再開発や新線で需要が底上げされ、単身世帯も増え、かつ都心より取得しやすく利回りも取りやすい区は、その代表格といえます。ただし、同じ区でも駅距離・築年・管理状態で結果は大きく変わるため、「区」で終わらせず「物件」まで見極めることが欠かせません。ここが、専門家と壁打ちしていただきたい部分です。
首都圏の資産価値の推移は、詳しくは『なぜ都内の不動産が高騰しているのか?東京都23区における5年間の坪単価推移をまとめてみた』の記事でもご紹介していますので、こちらをご覧ください。
6. 【リスク管理】2030年・2040年、そして「金利」を見据えた資産価値の保全策
結論から申し上げると、長期の不動産投資で本当に守るべきは「値上がり益」ではなく「家賃が入り続けること(=空室にしないこと)」です。これまで見た人口・世帯・借り手の質・地価・再開発のデータは、すべて「35年間、入居者が途切れないか」を見極める材料でした。その上で、正直に触れておくべきリスクが2つあります。
1つ目は「金利」です。金利は上昇局面にあり、借入コストや不動産価格に影響します。ただし、変動金利の水準やその影響の出方はあなたの属性・借入条件で大きく異なります。金利は確かに重要ですが、35年という長期で資産の価値を最終的に左右するのは、金利以上に「需要(空室にならないか)」です。金利の動きは冷静に注視しつつ、需要のあるエリア・物件を選ぶという本質を外さないことが肝心です。
2つ目は「購買力の限界」です。マンション価格の高騰で、中古市場では実需層の購買力が追いつかず、成約価格の伸びが鈍る動きも出ています。値上がり益(キャピタルゲイン)を主目的にすると、この局面変化に振り回されかねません。だからこそ、家賃収入(インカムゲイン)で着実に回る設計が、長期安定の軸になります。
2030年・2040年を見据えた3つの保全策
- 需要が続くエリアを選ぶ:世帯数が増え、地価が下支えし、再開発の材料がある区(第5章)。人口ピーク後も選ばれ続けるエリアを、データで選ぶ。
- 人口動態と借り手の質に合う住戸を選ぶ:単身・少人数の厚い需要(第2章)と、高所得借家層(第3章)の双方に応える立地・間取り。
- 管理と流動性を軽視しない:築年が進んでも競争力を保てる管理か、いざという時に売りやすい立地か。長期保有では「持ち続けやすさ」が効いてくる。
融資・与信の面は、詳しくは『不動産投資で金融機関から融資を受けるための2つの条件』の記事でもご紹介していますので、こちらをご覧ください。
※金利・融資条件・税制は経済情勢や制度改正で変動します。本記事は執筆時点の一般情報であり、将来を保証しません。個別判断は専門家にご確認ください。
7. 【本丸】データで選んだ物件を「節税」に効かせるという発想
ここまでは「空室にしないエリア・物件選び」の話でした。ですが、高い累進税率を負担するサラリーマンにとっては、もう一つ重要な視点があります。「その物件を、給与所得の節税にどう効かせるか」です。
結論から申し上げると、不動産投資の”本丸”の節税は、給与所得側にあります。仕組みはこうです。不動産投資で会計上の赤字(減価償却などによる)が出た場合、それを給与所得と合算して相殺できる「損益通算」(複数の所得の黒字と赤字を差し引きできる制度)という仕組みがあります。これにより課税対象の所得を圧縮し、所得税・住民税の負担を抑えられる可能性があるのです。
つまり、「空室にならない物件をデータで選ぶ」ことと、「その物件で給与所得を圧縮する」ことは、車の両輪です。空室が続けば節税設計は絵に描いた餅になり、税の設計を知らなければ手取りは伸びません。とりわけ、第3章で見た「高所得借家層」に選ばれる物件は、あなた自身が納得して持てる物件でもあります。

どのくらい変わる?損益通算の概算シミュレーション
では、実際にどのくらい税負担が変わるのか、簡単な概算で見てみましょう。ここでは、不動産投資で年間100万円の会計上の損失(減価償却などによるもの)が出たと仮定し、それを給与所得と損益通算した場合の軽減額を、課税所得の帯ごとに示します。ポイントは、あなたの「限界税率(所得の最後の部分にかかる税率)」が高いほど、同じ100万円の損失でも軽減額が大きくなるという点です。
表4:不動産の会計上▲100万円を損益通算した場合の税負担 概算軽減額
| 課税所得の目安 | 年収の目安 (※あくまで参考) |
限界税率の概算 (所得税+住民税) |
▲100万円を損益通算 した場合の軽減額(概算) |
|---|---|---|---|
| 695万〜900万円 | 年収1,000万円前後 | 約33% (所得税23%+住民税10%) |
約33万円 |
| 900万〜1,800万円 | 年収1,200万〜1,900万円前後 | 約43% (所得税33%+住民税10%) |
約43万円 |
| 1,800万円超 | 年収2,000万円超 | 約50% (所得税40%+住民税10%) |
約50万円 |
※所得税率は国税庁「No.2260 所得税の税率」の速算表(超過累進・7段階)にもとづく限界税率、住民税は概ね一律10%で計算した概算です。これとは別に、所得税額に対して復興特別所得税(2026年時点で2.1%)がかかります。 ※「年収の目安」は給与所得控除・基礎控除・社会保険料控除・扶養などにより大きく変わるため、あくまで参考です。正確な税率は「年収」ではなく「課税所得」で判断します。 ※出典元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
たとえば課税所得が900万円を超える方(年収1,200万円前後〜が目安)なら、限界税率はおよそ43%。年間100万円の損失を損益通算できれば、単純計算で約43万円の税負担軽減につながる、というイメージです。年収が高く累進税率の負担が重い方ほど、この効果は大きくなります。
ただし、次の点は必ず押さえてください。
- ① 損益通算できない部分がある——不動産所得の損失のうち、土地の取得に要した借入金の利子に対応する部分は損益通算の対象外とされています。
- ② 減価償却による損失は永続しません——償却が進むと赤字幅は縮小し、ローン元本返済が減価償却費を上回る局面(いわゆるデッドクロス)では、逆に課税が増えることもあります。
- ③ 節税だけを目的にしない——空室で実際に赤字が出れば、それは「節税」ではなく「実損」です。だからこそ本記事の前半で見た「空室にしない物件選び」が土台になります。
この「損益通算による給与所得の圧縮」は、詳しくは『不動産の赤字を他の所得と相殺する損益通算とは?』の記事でご紹介しています。団体信用生命保険(団信)を活かした考え方は『不動産保険運用®とは』、年収1,000万円超の方向けの具体論は『年収1,000万円のあなたに不動産投資を推奨する3つの理由』もあわせてご覧ください。
※節税効果は物件・所得・家族構成・他の控除で大きく異なります。ここで述べるのは一般的な仕組みであり、実際の効果や可否は税理士など専門家の確認が前提です。制度は将来改正される可能性もあります。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 東京の人口が減り始めたら、家賃も下がってしまいますか?
A. 賃貸需要のものさしは「人口」ではなく「世帯数」です。東京都の総人口は2030年ごろにピークの予測ですが、単身化により23区の世帯数は2040年ごろまで増える見込みです。人口が頭打ちでも、需要単位の世帯数はしばらく増える構造です(予測であり、エリア差は大きい点にご注意ください)。
Q2. 「東京の空室率は15%以上」と聞いて不安です。本当に大丈夫ですか?
A. その数字には、募集していない別荘・売却用・建て替え待ちなどが含まれます。投資判断で見るべきは、実際に募集中の住戸のうち埋まっていない「稼働ベースの空室率」です。定義の違いを押さえることが大切です。
Q3. 単身が増えるなら、ワンルーム一択でよいですか?
A. 一概には言えません。若年単身の需要は厚い一方、マンション価格の高騰で高所得層まで賃貸に回っており、広めのコンパクトタイプ(1LDK〜)の需要も強く伸びています(23区のファミリータイプ賃料は直近で前年比二桁上昇)。ターゲットとする借り手に合わせて間取りを選ぶことが重要で、立地・価格・出口戦略によって最適解は変わります。
Q4. 会社に知られずに不動産投資を始められますか?
A. 一般に、給与以外の所得にかかる住民税の納付方法などの工夫が案内されることがありますが、可否や手続きは勤務先の規定・自治体の運用で異なります。詳しくは専門家にご確認ください。サラリーマンの節税の疑問は『サラリーマンが節税に関してぶつかる13の疑問とその答え』もあわせてご覧ください。
9. データに基づくエリア選定はセットライフエージェンシーへご相談ください
ここまでで、「23区が手堅い理由」も「23区ならどこでも良いわけではない理由」も、そして「単身だからワンルーム一択ではない理由」も、データで見えてきたのではないでしょうか。とはいえ、世帯数予測・区別の地価・再開発・借り手の質を一つひとつ突き合わせ、あなたの目的に合う一物件を選び抜くのは、本業がお忙しい方には簡単ではありません。ここから先は、私たちにお任せください。
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10. まとめ
この記事のポイント
- 日本全体が減る中でも、東京23区は転入超過で増え続けている(2025年の23区の転入超過は約5.4万人、東京都は全国最多の6.5万人)。
- 増えているのは主に若い単身者で、ファミリーは郊外へ。東京都はすでに約5割が単身世帯で、単身・少人数の需要が突出して厚い。
- 23区マンションが平均1.36億円に達し、本来は買える高所得層まで”あえて賃貸”に回っている。家賃を払い続けられる強い借り手の存在は、空室リスクの質を変える。
- 賃貸需要のものさしは「世帯数」(23区は2040年ごろまで増加)、空室は「稼働ベース」で読む(統計上の空き家率とは定義が異なる)。
- 「落ちにくい区」の条件は①世帯(とくに単身)増 ②地価の下支え ③再開発・交通。都心5区(ベスト)は資産性が高い一方で低利回り。再開発と交通の追い風がある準都心・下町(中野・大田・葛飾)=セカンドベストが、取得しやすさと利回りのバランスでサラリーマンの現実的な主戦場。ただし区内でも立地の見極めは必須。
- 長期の要は「値上がり益」より「空室にしないこと」。金利は冷静に注視しつつ、データで選んだ堅い物件を損益通算による給与所得の圧縮(節税)につなげることが、高年収サラリーマンの資産形成を加速させる。
数値はいずれも予測やシミュレーションを含み、前提が変われば変動します。税務効果は個々の状況で異なり、専門家の確認が前提です。データに基づく物件選びは、ぜひセットライフエージェンシーにご相談ください。


